時代が変わっていく中で
生マグロやカツオを中心に、宮城県内をはじめ全国の魚を取り扱う株式会社阿部亀商店は卸売業・貿易業・加工業・冷凍倉庫業・製氷業を手掛けます。創業から140年を超え、守り続けることと変わっていくことを慎重に見極めながら阿部亀商店の専務取締役を努める阿部健さん。従業員は20歳から77歳のベテランさんまでと幅広い。昔ながらの常識と働き方改革が共存する水産業界で試行錯誤の日々を送っています。
“水産加工の仕事は、魚が揚がったら何時だろうが来る。”
第一次産業である漁師さんたちには労働基準法が適用されない。一方、水産に関わる多くの仕事は第一次産業に限りなく近い第二次産業であり、加工業者が労働基準法に則って働けば、水揚げされた魚を放置することになる。夜通し漁に出ていた漁師さんに感謝し、最高の鮮度で消費者に届けるため、昔から曖昧なグレーゾーンを担ってきたのです。働き方改革など到底フィットしない現実に戸惑う20歳の従業員に対し、阿部さんはなるべく彼ら世代に合うような工夫を凝らします。
あたりまえを見つめ直す
そして、主体的に働く楽しさも味わってもらおうと、新商品企画にも20歳の従業員が携わります。手がけているのは、「天然本マグロのホシジャーキー」。「ホシ」とはマグロの心臓のことで、足が早いので流通せず、漁師さんの家庭で食べられている幻の食材です。地元では「ほしっこ」とか「ほしこ」と呼ばれ、厚切りにして強めの塩胡椒で焼いて食べるのが最高なのだとか。阿部さんは水産資源が減っている今、これまで流通できないものとしてきたマグロの心臓に目をつけました。
“純粋な商品は、本来味のバラつきがあって当然なんです。”
阿部亀商店の商品のひとつに、三陸で水揚げした生のマグロを使い、食品添加物を使用しない「TUNA」があります。原料は宮城県産の生マグロと松島産の藻塩のみという純粋さがこだわりです。調味料を使わないからマグロの個体ごとにわずかに味の違いが出る。当たり前に味の均一性が求められる世の中で、ワインのようにその時のものを楽しむという感覚を大切にしています。今ではその思いと品質の高さ、おいしさが評価され人気商品となりました。
環境も人も守っていく
水産加工の現場では各業者が魚のアラを肥料メーカーに渡し、アラの量に対しての金額を受け取るという流れがあります。阿部亀商店ではツナを作る時に出るマグロのアラを使ったペット犬猫用の商品「Ara!Delicious」も手掛け、貴重な水産資源を無駄にしない努力も惜しみません。将来的にはマグロの心臓につづき、胃袋も商品化できればと考えている阿部さん。商品をつくって売ることは、漁師さんの収入源に繋がります。環境にも人の暮らしにも良い循環が生まれるように。
“若い世代に繋ぐためには、儲かる仕事でないと。”
水産業界は昔ながらの低賃金重労働に慣れてしまったところがあって、今まさに変わっていくときがきています。そのためにも、良いビジネスモデルが必要だという阿部さん。創業から140年、海の環境も働き方も変わってきた。いつの時代の何が良いとか悪いとかではなく、フラットな目線で取り組んでいきます。
