未来の魚食をつくる
黒潮と親潮が交わり、日本有数の水揚げ量を誇る銚子港と利根川を挟んで隣接している茨城県波崎港。この地で70年、魚と向き合い続けてきた水産加工会社・川畑。その三代目が、川畑雄一さんです。
魚って、調理が面倒と思われがち
干物を焼く匂いがマンションに残ることや、骨が煩わしいこと。そんな理由から、家庭の食卓で魚を選ぶ機会は少しずつ減ってきたのかもしれない——会社の主力だった干物の売上が落ち始めたとき、川畑さんは“魚の当たり前”が崩れかけていることに気づきます。未来の魚食をつくるには、発想を変えなくてはいけない。そう思ったときに、川畑さんが選んだのがこの道でした。
魚が苦手な昔の自分を超えて
電子レンジで、おいしく食べられる魚をつくること。
縦型のパウチに魚と野菜を入れ、深皿のようにそのまま温められる形にしたのも、湯煎調理をしやすい設計にしたのも、すべては“手間をなくす”ため。介護施設でも子どもでも、誰もが安全に扱える。そんな“これからの魚食”が詰め込まれています。
味付けも、これまでの水産売り場にはなかった発想です。サーモンボールのトマト煮、大きなエビのグリーンカレー。魚そのものをメインに据えながら、洋風・アジアンの料理にも大胆に踏み込む。「1品で成立する、魚の新しい食べ方を提案したかった」と川畑さんは言います。
そもそも、川畑さん自身が幼いころ“魚があまり好きじゃなかった”ということ。
この地域は天日干しやみりん干しが多くて、カリカリの魚をよく食べていたんです。正直、苦手でした(笑)
そんな少年が、いまは三人の子どもたちを魚好きに育てています。そして“昔の魚のイメージ”を変える商品を開発し続けている。そこには、魚と向き合い続けてきた土地への愛情が芯にあります。
漁師さんが獲ってきてくれた魚に、どう付加価値をつけられるか。波崎って、銚子の陰に隠れがちだけど、僕にとっては誇れる地元なんです。茨城県波崎産という価値をちゃんと届けたい
魚の未来を見つめて
取材中、川畑さんが最近取り組んでいるプロジェクトのことも教えてくれました。
霞ヶ浦では、名物のワカサギが減り、代わりにアメリカナマズが増えているそうです。この課題をなんとかできないかと、高校生たちと共同でメニュー開発に挑戦し、サッカーのスタジアムで販売するなど、地域課題に対してもアクションしています。
干物から電子レンジ調理へ、和風からアジア・洋風へ、そして高校生との地域課題プロジェクトへ。一見バラバラに見える活動も、実は同じ想いから生まれています。
「仕事は、おいしいものをつくること。そして、魚の未来を少しでも良くすること。」
その言葉は静かで、けれど芯が強い。川畑雄一さんのまなざしには、つねに“魚の未来をひらく”という意志が宿っています。
