青森・八戸という港

青森県八戸市に本社と工場を構える株式会社マルヌシは、創業70年の歴史を持つ水産加工会社です。全国トップクラスの水揚げ量を誇る八戸港には三つの市場があり、マルヌシはいずれの市場からも近い場所に拠点を構えています。仕入れた魚をできるだけ早く加工できること。それは、この町で商いを続けてきたマルヌシにとって、ごく自然で、当たり前の強みでした。

販路は、ゼロからでした。

創業当初は鮮魚の販売からスタートし、約25年前から水産加工に本格的に取り組み始めます。しめ鯖の製造を皮切りに、徐々に扱う魚種を増やし、自社商品の開発を進めてきました。そう語るのは、3代目代表取締役の地主裕太さん。2013年に入社した当時、八戸ではしめ鯖を製造する会社が数多く存在しており、「どう差別化するか」が大きな課題でした。これまでにないターゲットを明確にした商品づくり、そして観光客にも手に取ってもらえる“八戸らしいお土産”をつくること。その挑戦は、決して簡単な道ではありませんでした。

商品が完成しても、販路はゼロからの開拓です。一つひとつ足を運び、説明し、断られ、それでも続ける。地道な積み重ねの先に生まれたのが、「八戸サバ缶バー」でした。この商品は、マルヌシにとって明確な転機となります。

二つの「もったいない!」

その背景には、地主さんが感じ続けてきた二つの「もったいない!」がありました。
当時、八戸で水揚げされる鯖は小型化し始めていました。しめ鯖の製造には大・中サイズしか使えず、小ぶりの鯖は養殖魚の餌にしたり、アフリカへ輸出したりするのが一般的でした。けれど、小さくても八戸産の鯖は脂が乗っていて、十分においしい。

一方で、鯖は回遊魚のため、時期や状況によって脂のりに差が出やすい魚でもあります。脂が落ちたタイミングでは、サイズに関わらず養殖用や輸出向けに回されてしまう。「小さくても、脂の乗った八戸の鯖なのに。」この違和感が、地主さんの中でずっと引っかかっていました。

これは、もったいない。

そう感じた地主さんは、小ぶりでも脂の乗った八戸産の鯖を缶詰に加工することを決めます。鮮度も品質も良い魚が手に入る。その点に関しては、長年八戸で魚を扱ってきたからこそ、確かな自信がありました。

しかし、もう一つの「もったいない!」が残っていました。それは、パッケージです。
これまでの自社商品は、無難で目立たないデザインが多かった。一生懸命つくった中身が、きちんと伝わっていない。それもまた、もったいない。
ターゲットとなる消費者に届くよう、商品の魅力が一目で伝わるデザインに徹底的にこだわりました。その結果、発売後すぐに取扱希望の問い合わせが入る商品が完成します。

八戸の魚を、もっとおいしく、おもしろく

サバ缶の開発・販売を皮切りに、マルヌシは次々と新たな商品を生み出してきました。「ヒラメ漬け丼の素」、「あおもり串酒場」など、どれも地域の魚を生かしながら、食べるシーンまで想像してつくられた商品です。

そして、ここ2〜3年かけて構想を練ってきた「金目鯛の煮つけ」が、いよいよ完成しました。実は八戸港は、船凍金目鯛の水揚げ量日本一を誇る港です。調理が難しいとされる煮付けを、温めるだけで食べられる商品に仕上げました。

八戸を金目鯛の街として打ち出していきたい。”

地主さんの言葉には、商品づくりを超えた視点があります。名刺に刻まれた「もっとおいしく、おもしろく。」というコピーのとおり、マルヌシはこれからも、まだ知られていない地域資源に光を当てながら、八戸の魅力を全国へ届けていきます。

八戸の港に日々揚がる魚の価値を、どうすれば一番おいしく、そして正しく伝えられるのか。
その問いに向き合い続ける姿勢こそが、マルヌシなのかもしれません。