知らない世界へ

福島県いわき市に本社と工場を構え、明治時代から半世紀にわたりマグロを扱ってきた山菱水産。東京オフィスのマネージャーを務める出澤さんは、かつては山菱水産に調味料などを納める取引先の人間でした。3年ほど取引するうちに、村山社長の仕事への情熱やお人柄に触れ、自分も山菱水産で学び働きたいと思うようになったそう。そして、全く知識のなかった水産加工業の世界に飛び込みました。

社長は、お殿様じゃなくて「武将」ですね。

まぐろの仕入れから加工、販売、飲食店経営、そして水産高校の遠洋航海実習サポートなど、幅広い事業を手がける山菱水産。出澤さんは海から食卓までマグロのすべてにまつわる仕事を知ることから始まり、憧れて入った山菱水産での日々は猛スピードで回っていきます。司令を出して上から見ているお殿様ではなく、いざとなったら最後は出ていく・・そんな武将のような社長の存在があるからこそ、思い切って挑戦できるといい、出澤さんの表情からも充実している様子が伺えます。

マグロも人もおもしろい

「マグロって、物語的なおもしろさと物理的なおもしろさがあるんです。」本マグロ、メバチマグロ、ビンチョウマグロ、キハダマグロ、ミナミマグロ・・種類も多く、大きさによって呼ばれ方が違ったり、漁法もさまざま。漁場によってマグロの餌も変わるから味も変わる。エビを食べているマグロが最もおいしいのだとか。鮮度を高く保つために死語硬直前に凍らせ、解凍するときは塩水を使うことでもっちりと仕上がる、などなど面倒くさいけれどおもしろいのがマグロの世界。

横文字系の人がいないっていうか、みんな自然体。

新しい世界に飛び込んだ出澤さんにとって新鮮だったのは、マグロだけでなく水産加工に携わる「人」でした。皆さんものへの強いこだわりがある一方で、マインドはオープンで自然体。不安定なものを扱っているからこそ苦労は絶えないのだけれど、おおらかさがあって、獲れなくてもしょうがないって言える覚悟がある。「同業(マグロ屋)だとなんでも話すってわけにはいかないけど、タコとか他の魚種を扱う人たちとは商売の構造は同じだから共感できる部分も多くて、自然体の交流がおもしろいですね。」

海から食卓までバトンを渡していく

うれしいのは良いお客さん(小売業者)に出会えたとき、という出澤さん。買う側だからと上から目線にならず、いいものをありがとうという姿勢のお客さんとのやり取りはやりがいにも繋がります。

鮪のポテンシャルを引き出そうと努力してくれる。

良いお客さんは品質管理にもこだわって、マグロを良い状態で店頭に並べてくれます。冷凍マグロのおいしい食べ方を動画にして店頭で消費者へ伝えてくれたり。最高品質のマグロを消費者に届けたい、という同じ思いでバトンを渡せる喜び。お話を聞くうちに、外から飛び込んだ出澤さんもすっかりこの道の人になられているのがわかります。さまざまな角度から研究し尽くした専門技術と関わる人たちの心意気で、おいしいマグロが食卓まで届くのです。